🧑‍⚕️ 11月疾患啓発「円形脱毛症」について

今回は、11月の疾患啓発である円形脱毛症(えんけいだつもうしょう)について、原因や種類、治療法などを掘り下げてお伝えします。


円形脱毛症とは?

円形脱毛症は、頭髪や体毛が突然、円形や楕円形に抜け落ちる病気です。多くの場合、コインのような形の脱毛斑が1箇所、または複数箇所に現れるのが特徴です。性別や年齢に関係なく、子どもから大人まで発症する可能性があります。

円形脱毛症の種類

脱毛の広がり方や形によって、いくつかのタイプに分類されます。

  • 単発型(たんばつがた)
    • 最も一般的なタイプで、脱毛斑が1箇所だけ現れます。多くは自然に改善する傾向があります。
  • 多発型(たはつがた)
    • 脱毛斑が2箇所以上、複数現れるタイプです。脱毛範囲が拡大したり、脱毛斑同士がくっついたりすることもあります。
  • 蛇行型(だこうがた)
    • 後頭部から側頭部にかけての生え際に沿って、帯状に脱毛が広がるタイプです。治療に時間を要することがあります。
  • 全頭型(ぜんとうがた)
    • 脱毛が頭部全体に広がり、全ての髪の毛が抜けてしまうタイプです。治療が長期にわたるケースが多いです。
  • 汎発型(はんぱつがた)
    • 頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛など全身の毛が抜ける重症型です。治療も長期化しやすい傾向があります。

このように、円形脱毛症は症状の範囲や進行度により分類され、タイプによって治療方針や予後が異なります。


主な原因

円形脱毛症の正確な原因はまだ完全に解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。

  • 自己免疫の異常(最も有力)
    • 身体を守る免疫システムが、誤って自分の毛根(毛包)を異物と認識して攻撃してしまうことで発症します。これにより毛根がダメージを受け、健康な髪の毛が急に抜け落ちてしまいます。
  • 遺伝的な要因
    • 家族内に円形脱毛症の患者さんがいる場合、発症リスクは高まりますが、親子間の遺伝による発症率は約10%程度とされています。
  • 精神的・肉体的ストレス
    • ストレスが自律神経や免疫のバランスに影響を与え、発症の引き金になる可能性が指摘されていますが、直接的な関連は不明です。
  • アトピー性素因・アレルギー体質
    • アトピー性皮膚炎やアレルギー疾患を持つ方は、円形脱毛症を発症しやすい傾向があります。
  • ホルモンバランスの急激な変化
    • 特に出産後の女性など、ホルモンバランスが大きく変動することが原因の一つとなることがあります。
  • ウイルス感染
    • 風邪やインフルエンザなどのウイルス感染が、脱毛を誘発することがあります。

症状の特徴

  • 円形や楕円形の脱毛斑が突然現れます。
  • 脱毛している部分の皮膚は、赤みやかゆみを伴わないことが多いです。
  • 脱毛斑は1箇所だけでなく、複数箇所に現れたり、範囲が拡大したり、再発を繰り返すこともあります。

治療法について

現時点で、円形脱毛症を完全に治す(根治させる)ことを保証する治療法はありませんが、症状を改善させるための様々なアプローチがあります。効果には個人差があることをご理解ください。

  • ステロイド外用薬
    • 炎症を抑える作用が強いため、主に脱毛部分に塗布します。
    • 効果が期待できますが、長期間にわたり同じ部位に使い続けると、皮膚が薄くなったり、毛細血管が拡張したりといった副作用が出ることがあります。
  • カルプロニウム塩化物外用液(例:フロジン®)
    • 血管を広げて頭皮の血流を良くし、発毛を促進する目的で用いられます。
    • 単独での劇的な効果は限定的ですが、他の治療と併用されることが一般的です。
  • ミノキシジル外用薬
    • 血管拡張作用を利用して発毛を促します。
    • 円形脱毛症に対する効果はやや限定的ですが、他の治療との併用が検討されます。
  • 内服薬
    • 症状の程度や脱毛範囲によって使用する薬が異なります。
      • 重症例:JAK阻害薬やステロイド内服薬などが選ばれます。
      • 軽症〜中等症例:抗アレルギー薬やセファランチンなどが選ばれることが多いです。
    • 効果には個人差があるため、医師とよく相談しながら治療を進めることが重要です。
  • 冷却療法
    • 液体窒素を用いて脱毛斑に刺激を与え、発毛を促す方法です。
  • 局所免疫療法(SADBEやDPCPなどの外用)※当院では実施しておりません。
    • 特殊な薬剤を脱毛部位に塗布し、あえて軽いかぶれを引き起こすことで、免疫のバランスを調整して発毛を促す治療です。広範囲の脱毛や難治性の場合に用いられ、高い有効率が報告されています。
  • その他の治療※当院では実施しておりません。
    • 光線療法や植毛などが、補助的な手段として検討されることがあります。

日常生活で心がけたいこと

治療効果を高め、再発を防ぐために、日常生活の見直しも大切です。

  • ストレス管理
    • 溜め込まないように、ご自身に合ったリラックス方法を見つけることが大切です。
  • 規則正しい生活
    • バランスの取れた食事や、十分な睡眠時間を確保するよう努めてください。
  • 頭皮のケア
    • 頭皮を清潔に保ちましょう。
  • 血行促進
    • 適度な運動や入浴などで、血の巡りを良くすることを意識しましょう。
  • 禁煙・節酒
    • アルコールは控えめにし、喫煙は避けるようにしてください。喫煙は血行不良や栄養不足の原因となり、髪の成長を妨げる可能性があります。

最後に

円形脱毛症は、自己免疫の異常やストレスなど、複数の要因が関与する疾患です。突然発症し、自然に治ることもあれば、治療が長期化することもあります。また、治癒しても半年以内に再発する方も少なくありません。

治療法は患者さんの症状、年齢、生活背景などを考慮して選択されます。気になる症状がある場合は、早めに当院にご相談ください。

〜医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一 監修〜


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