秋は過ごしやすい季節のはずなのに、原因不明の体のだるさや、なかなか取れない疲労感に悩まされていませんか?それは「秋バテ」かもしれません。
夏の暑さが終わり、秋へと季節が移り変わる際の急激な気温や気圧の変化、さらには夏場に蓄積された身体への負担が原因で、体調を崩してしまう状態を「秋バテ」と呼んでいます。
◆秋バテの主な原因
秋バテの背景には、「自律神経のバランスの乱れ」と「身体の冷え」が深く関わっています。
- 日中の大きな気温差による自律神経の疲弊 夏から秋への移行期は、朝晩は涼しいのに日中はまだ暑さが残るなど、一日の気温差が大きくなりがちです。この激しい温度変化に適応しようと、体温調節を担う自律神経が過剰に働き、疲弊してバランスを崩してしまいます。
- 冷房による身体の慢性的な冷え 夏の間、冷房の効いた環境で長時間過ごすことで、身体が芯から冷え切った状態が続きます。これにより血流が悪化し、自律神経の働きも低下します。
- 夏の疲労とダメージの遅延的な出現 暑さによる食欲不振や寝苦しさによる睡眠不足など、夏に受けた身体的なストレスやダメージが、涼しくなった秋になってから一気に体調不良として現れることがあります。
これらの要因が複合的に作用することで、疲労感、倦怠感、食欲不振、消化器系の不調、頭痛、めまい、不眠など、多岐にわたる不調を引き起こします。
◆どのような症状が出るのか
秋バテで現れやすい症状は、身体的なものと精神的なものに分けられます。
<身体に見られる症状>
- 持続する疲労感:休息しても疲れがなかなか抜けない、朝すっきりと起きられない。
- 消化器系のトラブル:食欲がわかない、胃もたれや胸やけ、便秘や下痢などのお腹の不調。
- 痛み・不快感:立ちくらみやめまい、頭が重い、頭痛、肩や首のこりの悪化。
<精神面に見られる症状>
- 意欲の低下:何事にもやる気が出ない、仕事や勉強に集中できない。
- 気分の変動:イライラしやすい、憂鬱な気分になる、漠然とした不安感。
特に、朝晩と日中の気温差が大きい時期は、自律神経に大きな負担がかかり、これらの症状が出やすいとされています。心当たりのある不調が続く場合は、秋バテを疑い、適切なケアを始めることが大切です。
◆秋バテを改善・予防するための生活習慣
日々の習慣を見直すことで、秋バテを予防し、快適な秋を過ごすことができます。
1. 規則正しい生活と質の高い休息
- 十分な睡眠の確保:毎日決まった時間に就寝・起床し、7〜8時間程度の質の良い睡眠を目指しましょう。起床直後に日光を浴びることで、体内時計がリセットされ、睡眠リズムが整いやすくなります。
- 入浴で体を温める:シャワーだけでなく、38〜40℃程度のぬるめの湯船にゆっくり浸かることで、身体の芯まで温まり、心身のリラックス効果が高まります。
2. 食事による身体の内側からの調整
- 温かいもの・旬の食材を意識:冷たい飲食物は避け、ショウガ、ネギ、根菜類など、体を温める効果のある食材を積極的に摂りましょう。また、疲労回復を助ける栄養素が豊富な秋の旬の食材(きのこ、さつまいも、鮭など)を取り入れることも有効です。
- ビタミンB1の摂取:豚肉などに多く含まれるビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える手助けをし、疲労回復に役立ちます。
- バランスの取れた食事:タンパク質、ビタミン、ミネラルを偏りなく摂取し、夏に弱った胃腸の働きを回復させることが重要です。
3. 適度な運動で血行を促進
- 軽い有酸素運動:ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で身体を動かすことで血行が促進され、自律神経のバランスを整える手助けになります。
- こまめなストレッチ:激しい運動でなくても、ラジオ体操やストレッチなどでこまめに体を動かすことで、肩や首のこりを軽減できます。
4. 気温差への備え
- 服装による体温調節:一日の気温差に対応できるよう、薄手のカーディガンやジャケット、ストールなどを活用し、こまめに脱ぎ着して体温を調節しましょう。
- 冷え対策:オフィスや電車内など、冷房が効いている場所では、ひざ掛けやカーディガンで「三つの首」(首、手首、足首)を冷やさないようにすることが有効です。
◆症状がつらい場合の対応(受診の目安)
秋バテは「病気ではない」と軽視されがちですが、放置すると症状が悪化したり、他の不調につながることもあります。倦怠感や胃腸の不調などのつらい症状が長く続く場合や、日常生活に支障をきたしている場合は、医療機関を受診してください。
医療機関では、症状に応じた対症療法(鎮痛剤、整腸剤、睡眠薬など)や、体質や症状に合わせて自律神経のバランスを整える効果が期待できる漢方薬などが処方されることがあります。
つらいと感じる場合は、一人で我慢せず、専門家へ相談したり、上記のような生活習慣の見直しを始めたりすることが大切です。
医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一(日本内科学会 総合内科医)監修


